フローラルノート

花の香り フローラルノート: バラ 

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​香水と言えば花の香りは忘れてはいけない要素です。調香の世界では「フローラルノート」と呼ばれています。
フローラルは「花の」ですが、「ノート」は意外かもしれません。もちろん、日本語の「ノート(ブック)」の意味とは異なります。実は「ノート」には、「楽器の音色、音符、ピアノなどの鍵(けん)」という意味もあるのです。調香はある種、音楽のようなもの。
香りのハーモニーが香水で、そこに響く「花の香り」が「フローラルノート」なのです。

ちなみに調香ではさまざまな「○○ノート」が登場しますが、「フローラルノート」と並んで重要なのが、「シトラスノート」。こちらは「柑橘系の香り」です。「シトラスノート」は男女ともに使われますが、「フローラルノート」は特に女性らしさが前面に出る香りです。香りを音のように表現するのって素敵ではないでしょうか?
さて、今回は、この「フローラルノート」について探究していきます。

フローラルノート(1) バラ

​フローラルノートにはさまざまな種類がありますが、いちばん最初に思い浮かぶのはやはりバラの香りではないでしょうか。
「フローラルノート」系の女性用の香水では、ほとんどバラの香りが使われています。天然香水では、この「バラの香り」はバラの花から取り出します。花を溶媒に漬けて芳香性の分子(香り成分)を抽出します。 そのため、ひとくちに「バラの香り」と言っても、実はさまざまな香りを含んでいます。
なぜなら、バラ自体にもさまざまな種類があるからです。そこで、少しバラの歴史と種類を見てみましょう。

いわゆるバラ(園芸バラ)はバラ科バラ属の植物です。 西欧的なイメージがありますが、実はチベット周辺や中国の雲南省からミャンマーにかけてが原産地だと考えられています。
後で述べるように、ここから中近東を経てヨーロッパに伝わるとともに、中国に渡った品種が再度、別経路で西欧に伝わりました。バラが最初に西欧に伝えられたのは、11世紀頃と言われています。西欧のキリスト教諸国が聖地エルサレムの奪還を目指して派遣した十字軍が持ち帰ったのです。
このバラは、ダマスカス地方(現在のシリア)に広まっていたもので、このことから「ダマスク・ローズ(ロサ・ダマスケナ)」と名付けられています。

ダマスク・ローズは見た目も艶やかで花としても注目されました。また、その香りは特徴的な甘く濃厚な香り。そのため、バラは香りの面でも探究されていきました。ダマスク・ローズの甘く濃厚な香り。それはそれで素晴らしいものです。ただ、甘さが強いと単調になりがちです。  

そこに現れたのがティー系やスパイス系とも呼ばれる東洋のバラでした。これはいわゆる大航海時代から19世紀頃にかけて東洋から西欧に持ち帰られたものです。これは「ヒュームズ・ブラッシュ・ティーセンテッド・チャイナ」など「ティーセンテッド」という名前を持つバラです。「ティーセンテッド」とは「ティーの香りのする」という意味。香りに注目されていたことがよくわかります。
また、「チャイナ」は、こうしたバラが東洋出身であることを表しています。 

写真のバラも同様にティー系のバラです。「パークス・イエロー・ティー・センティッド・チャイナ」と言われています。 

Rosa Indica – Rosier des Indes jaune, “Choix des plus belles fleurs“ by J. P. Redoute [Public Domain via. The BHL] 

おおまかに言えば、バラは、ダマスク・ローズと、ティー系などのオリエンタルローズ、そしてその組み合わせなどを含みます。フローラルノートとしてのバラの香りも、こうしたバラの種類によってさまざまな個性を持つのです。 
バラの香りについては、後に項を改めて詳しく説明したいと思いますが、成分を簡単に言うと、以下のような物質を含んでいます。 

2-フェニルエタノール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、酢酸フェニルエチル 、酢酸ゲラニル 、オイゲノール、 3-ヘキセン-1-オール、3,5-ジメトキシトルエンなど。 
これまでの説明で言うと、2-フェニルエタノール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロールがダマスク・ローズと関連深いものです。 酢酸フェニルエチル 、酢酸ゲラニルはフルーティーな香りで、オイゲノールはスパイシーな香りです。また、3-ヘキセン-1-オールは青葉アルコールとも呼ばれ、茶葉に多く含まれる成分です。3-ヘキセン-1-オールや3,5-ジメトキシトルエンなどは他の成分と組み合わさって紅茶に似た香りをつくりだしています。 

ゲラニオール 

また、ゲラニオールはもともとはゼラニウムから発見されたため、こういう名前が付いています。
いくつかの薬理作用が知られており、アロマテラピーの世界では女性ホルモンとの関係が謳われている成分です。もともとフローラルノートは植物由来ですから、フローラルノートに関しては、植物由来の効果効能も期待できるかもしれません。  

フローラルノート(2) ジャスミンの記事↓

花の香り「フローラルノート」ジャスミン

花の香り「フローラルノート」ジャスミン

ジャスミンもフローラルノートを構成する重要な成分です。ジャスミンと言うとジャスミンティーを思い浮かべる方も多いでしょう。そうした方々からすると、ジャスミンがフローラルノートのひとつであることには違和感を感じるかもしれません。フローラルノートは花の香りだからです。 しかし、実はジャスミンは葉に香りがある訳ではなく、花に香りがあるのです。 

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